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戦場 心の傷~NHKスペシャル~ [独白]

★ゆうべ(09/14)午後9時からのNHKスペシャル「戦場 心の傷~兵士はどう戦わされてきたか~」を見た。

★戦争によって兵士が蒙る心の傷は、ずっと昔からあった。戦争にはつきものの昔からある心の病だったのだ。

★しかし第1次世界大戦の時、毒ガス兵器(ホスゲン)や高射砲、マシンガンなど人間を大量・無差別に殺せる兵器が開発・使用されるころになってから、当時シェル(砲弾)ショック(戦闘ストレス反応)と呼ばれた、塹壕で死の恐怖を体験し続けた帰還兵が発症する精神異常の科学的研究が始まった。後にこれはアメリカの精神医学者によってPTSD(心的外傷後ストレス障害)と名づけられた。

★番組には、第1次大戦当時、記録されたPTSDにかかった兵士の映像も流されていた。ベッドにねている患者に向かって、医師が大声を出すと、とたんにベッドの下に隠れ、きょろきょろとあたりを見まわす。彼は戦場と、普通の生活の場との区別がつかなくなってしまったのだ。

★戦争によるPTSDは、兵士の精神に深刻なダメージをもたらす。(PTSDになると脳がダメージを受け、海馬が萎縮して記憶障害を引き起こす、非常に攻撃的になる、自殺願望が強まりリストカットを繰り返す、などの深刻な症状をもたらす)が、当時はこういう深刻な症状を見せる帰還兵に対し、電気ショック療法を施し、戦場に送り返していたという。

★このPTSDに関する研究は、第2次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争に至るまで、欧米を中心に非常に進んだ。戦場に行くことにより常に死の恐怖に苛(さいな)まれ、命令通りに相手を殺さなくてはならない。それが絶え間なく繰り返され、兵士の心からは次第に人間らしい穏やかな心や理性が失われ、かわりに攻撃性やトラウマなどの病的な志向性で満たされるようになる。こうして任期を終え、国に帰ってくる頃には、すっかり心を病んでしまう。

★そこでアメリカでは、歴史家のS.L.A.マーシャルを招いて、彼の観察と研究に基づき、人を人とも思わぬよう、兵士を生身の人間から殺人マシーンに変える為の「改造訓練」の手法を編み出し、新兵の訓練などに応用した。さらにベトナム戦争の頃になると、今度は「条件付け」で兵士をさらに高性能な殺人人間マシーンに作り変える訓練が行われるようになった。

★…ここまで番組を見ていて、何とも言えないべたっとした嫌悪感に見舞われてしまった。こうまでして人間は戦争がしたいのか。相手の命を破壊したいのか。それをやったらPTSDというかたちで己の心身も破壊されてしまうというのに…。

★番組を見て私が深く印象に残ったのは、ベトナムで19歳にして庶民の大量殺戮に手を染めてしまった元ベトナム帰還兵のエピソードであった。彼は命令通りに相手を殺した。殺したのは父親と子供、赤ちゃんと母親。彼が撃ち放った銃弾はその母親の体を貫通し、赤ちゃんの顔を吹き飛ばしてしまった…。帰還して以来、彼はこれらの人々を殺してしまった罪の意識に苛まれ、このエピソードを語った数年後に自らをライフルで撃ち抜いて死んだという。このエピソードは、当時を涙ながらに語る彼を記録した英国TV局のドキュメンタリーフィルムの内容である。

★911以後、イラク戦争の時代になり、多くのアメリカの若者が男女を問わず、戦地へ送られていった。そして相変わらず、戦闘により精神を深く傷つけられ、病んで帰ってくる人は後を絶たない。


★戦争という蛮行は、敵味方、どちらにも全くと言っていいくらい、何の利益ももたらさない。ましてや幸福や達成感など絶対にもたらすわけがない。戦場に送られ、精神を深く病んで帰還する多くの人々の存在が、端的にそれを証明している、と思った。
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挿入できるよ

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by 挿入できるよ (2012-01-23 05:49) 

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