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8月はじめのつれづれ。~赤塚不二夫氏の訃報に接す~

★2008年の8月が始まった。東京では梅雨明け宣言以来、地獄の釜の底にいるような日々がずっと続いている。

★遠くを見ると、モヤモヤと風景が揺れている。昨今のヒートアイランド現象と相俟って、この陽炎現象は、例年の同じ時期よりも余計に揺らめいて眼に写るようになった。

★中天をガガッと照らす厳しい陽光に、ただでさえ不景気で気がめいっている所へ、身体中の水分とともに体力まで失ったか、いわゆる熱中症で倒れる人は、今年はとみに多く、病院に担ぎこまれるケースが目下史上最悪のペースで増加の一途をたどっているとか。

★相次ぐ通り魔が事件。川崎では女までがナイフを振り回し、通り掛かりの3人に切りつける事件まで起こった。肉、うなぎの産地偽装に続いて、今人気のマンゴー業界にまで産地偽装者が現われた。水難・海難事故も絶え間なく起こっている。

★斯かる暗澹たる世の憂さゆえに、盛夏の熱波もいっそう堪え辛い。


★今朝、早く眼が醒め、FM放送でバロック音楽、邦楽を聴いていた後で、朝7時のニュースが流れた。ニュースは、ある人物の訃報を伝えた。

★「天才バカボン」「おそ松くん」「もーれつア太郎」「ひみつのアッコちゃん」など、数々の名作と愉快なキャラクターを世にデビューさせた、ギャグ漫画の天才・赤塚不二夫氏が肺炎の為、都内の病院で亡くなった、というのだ。享年72。癌を発症し、2000年代に脳内出血を起こして倒れてからは創作活動を休んでから、意識不明状態が長く続いた末での最期だった。

★赤塚氏の代表的作品といえばよく言われているように「天才バカボン」だが、個人的な印象に残っている赤塚漫画は少年雑誌「冒険王」に連載されていた「大バカ探偵 は○ち小五郎」(←“は○ち”は自首規制対象の言葉なのでこう記述した)で、赤塚さんの描く絵のタッチがオーヴァーでリアルな路線になりだした頃の作品の一つだった。このタッチは「天才バカボン」に既に見られ始めた傾向で、登場人物の顔がどアップになったコマを見ると、みょーなふうにリアルになるのがとても可笑しかった。この作品は、たしか江戸川乱歩作品の代表的な登場人物、名探偵・明智小五郎を、赤塚さん流のナンセンスな諷刺センスでキャラクター化させた主人公がバカをやるお笑い漫画だった、と記憶している。

★「天才バカボン」の主人公、バカボンのパパの名台詞「これでいいのだ!」も、印象深く我々の集団無意識に刻印された。

★赤塚作品のキャラクターと言えば、有名なのは「おそ松くん」でデビューし「シェー!!」のポーズで一世を風靡したイヤミ氏、チビ太、ハタ坊、「もーれつア太郎」でデビューのニャロメ、ケムンパス、べし(蛙)、心のボス(「~のココロ」「はぁぽっくんぽっくん」が口癖の、いわゆる狼男ならぬ“狸男”)、「レッツラ・ゴン」の喋る熊・ベラマッチャ、そして「天才バカボン」に登場する、ピストルをすぐにぶっ放す、目玉つながりのお巡りさんや「お出かけですか?」とやるレレレのおじさんなど、とにかく主人公の存在が翳むくらい個性強烈な連中ばかりなのだが、中でも自分が好きなのは、ニャロメもそうだけど、「天才バカボン」でデビューした鰻と犬の合体キャラ、ウナギイヌが個人的には印象に残っている。

★後年、TVの科学番組で、鶉と鶏など違う種類の動物をまだ胎児の段階でつなぎ合わせた「キメラ動物」というのを見た時、ウナギイヌがまさにこういう生き物なんだと直感した。そう遠くはなさそうな将来、バイオテクノロジーが今以上に急激に進歩し、鰻と犬を遺伝子段階でつなぎ合わせて、リアルな「ウナギイヌ」を生み出せるようになるのだろうか??…幾ら何でも、それはなさそうな気が…でもわからんなぁ。

★あと赤塚氏の飼い猫だった菊千代。この猫が登場する漫画「花の菊千代」で、赤塚氏はニャロメと菊千代を共演させている。小学館のコロコロコミックで読んだ覚えがあり、たしかニャロメと菊千代のどっちが人間の女の子にもてるか、といういわば「モテ競争」のストーリーで、最後にはニャロメが女の子に「何よ、きったない猫!」といわれて蹴飛ばされ、ズルイ手段を使った菊千代のほうが女の子と仲良くなってしまうという、皮肉なオチになっていたようだ。この菊千代も印象に残るキャラだ。

★今朝のワイドショーで、1998年に紫綬褒章を貰った時の映像を見た。赤塚氏は何処か飄々としていた。そして、「43年間も漫画を描いていたらこれ(紫綬褒章)をもらっちゃった」と、さらりといわれていた。よくありがちな“ええかっこしい”コメントはそこにはなかった。


★私自身、かなり小さな時分から赤塚作品にふれて育ってきた。作品に込められた破天荒でドタバタ・滅茶苦茶なナンセンスさは、その時から私の中に沁みつき、長ずるにつれ、無意識の中へと沈静していき、何時しか私の精神的な支柱の一部と化した。

★兎に角多角多面的で、滅茶苦茶だったが、その中に常に世に対するキツイ諷刺やパロディを込めてあるのが赤塚作品だと私は思う。

★しかしそんな赤塚氏も、病に倒れてから、新しい作品を世に問えなくなってしまった。2006年に2度目の奥さんを亡くし、それから3年目のきょう、ついに昇天せざるを得なかった。

★赤塚氏の生み出した作品やユニークなキャラクターたちは、おそらく日本人の絶滅しない限りは、生みの親である氏の昇天したそのあとも、世代を超えて、愛されていくことであろう。

★赤塚さん、数々の楽しい物語を有難う御座いました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
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ティファニー ネックレス

8月はじめのつれづれ。~赤塚不二夫氏の訃報に接す~:ガラテア通信 ブログ板:So-netブログ
by ティファニー ネックレス (2013-06-14 16:04) 

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